厨房設計コンサルタントが教える繁盛店づくりの視点

 

【第1回 業界展望】令和の外食産業を予測!
生き残れるのはこんな店

 

2019年07月01日

 

いよいよ令和の時代が始まりました。新元号や、世の中のお祝いムードにあやかった企画を実施している飲食店も多いようです。

 

思えば、平成の30年間で飲食店の経営環境は様変わりしました。平成が始まったとき、インターネットによる店舗紹介や予約がこれほど普及していることを、どれだけの人が想像していたでしょうか。食のグローバル化が進み、食の安全・安心への関心も高まりました。ロードサイドの発展で都市では人の流れが変わり、立地戦略も変化しています。30年前には「禁煙席」を設けている飲食店は珍しい方でしたが、現在の客席は「全席禁煙」が標準です。

 

 

令和の時代は、外食産業にどのような変化が起きるのでしょうか。遠い先を見通すことはできませんが、いくつか、見え始めている変化の潮流を挙げたいと思います。

 

まず、人口減少と少子高齢化に伴って労働力が減ります。内閣府の「平成30年版高齢社会白書」によると、2017年の生産年齢人口(15~64歳)は7596万人でしたが、2035年には6494万人と、1000万人以上が減る見込みです。この間、正社員はもちろんのこと、パート・アルバイトといった働き盛りの人口が減り続けます。外食産業は長年スタッフの確保に苦しんできました。その状況が今後はより厳しくなるということです。もう一つは、更なるICTの活用です。訪日外国人が増える東京オリンピック・パラリンピックを控え、中小規模の店舗でもキャッシュレス決済の普及が進むものとみられます。店舗での支払い方法はクレジットカードや電子マネーを使ったキャッシュレス決済が当たり前になっていきます。働き手が減り、レジから現金が消えるーー。そんな時代がすぐそこまで来ているのです。

 

効率化を追い求めた究極のかたちは「ノークック、ノーキャッシュ」

そんな新しい時代には、どのような運営スタイルの飲食店が生き残るのでしょうか。もちろん、平成までと同じスタイルを維持する店もメニューやサービスと価格のバランスが取れた店は生き残るでしょう。と同時に、経営環境の変化により積極的に対応した店に一つの可能性を感じています。その究極のかたちが、厨房では仕込みや調理をしない、ホールでは現金を扱わない、「ノークック、ノーキャッシュ」の店舗といえます。 ここまで徹底している店は私の知る限りまだありませんが、ロイヤルホールディングスが2017年11月に開業した「ギャザリング テーブル パントリー」は先進的な事例として注目しています。ここは、特殊な調理機器を用いることで人の手による調理を大幅に減らし、さらにキャッシュレス決済にすることで、外食産業における生産性の向上を目指す研究開発店舗です。

 

ギャザリング テーブル パントリーのメニューの一部。
セントラルキッチンで加工度を高めた状態で店舗に納品される

 

同社の傘下であるロイヤルホスト株式会社が運営する「ロイヤルホスト」は店舗にコックを置き、他のファミリーレストランと比べて店内調理の比率が高いことが特徴ですが、ギャザリング テーブル パントリーはその対極にあります。まず、同社のセントラルキッチンで加工度を高めた商品を店舗に納品。それを、コックが手鍋やフライパンで調理したかのように仕上げられるよう、時間、温度調整をプログラミングさせた調理機器で加熱します。湯せんでちょうどアルデンテの状態になるパスタもそろえ、43席の店舗で厨房を1.5人で運営しています。仕込みの時間も大幅に短縮できますし、火と油を使わず調理機器が最小限に抑えられているため、厨房も比較的コンパクトで、その分を客席スペースに割り当てられる利点もあります。

 

もう一つの特徴は、セルフオーダーでキャッシュレスにしたことです。注文はスタッフが客席にお持ちするタブレットを通じて行います。支払いはクレジットカードや電子マネーのほか、QR決済が利用できます。来店客とスタッフとの接点は、店舗の利用方法を説明する案内時、配膳時、決済時で、ホールも2~2.5人で運営可能なのです。36.36坪・43席の店を4人で運営していますが、スタッフには余裕をもって働いてもらい、さらにはお客様との会話を増やしておもてなしにも注力してほしいというのが、同社の考えです。

 

スタッフが専用タブレットを客席にお持ちして、お客様はタッチ操作で注文する。

 

また、キャッシュレス化すれば、現金を管理しませんから安全ですし、売上報告などが自動化できることから、店長の働き方改革にも貢献します。

 

人手がかかる工程のアウトソーシングが進む

 

では、効率化のために多大なシステム投資をできない飲食店は淘汰されていくのでしょうか。私はそうは思いません。ただ、注文を受けてからハンバーグを手ごねして成形し、焼くといった旧来の「100%手作りの店」は、家族経営でもない限り、人手不足や人件費高騰の影響を受けて立ち行かなくなるのではないでしょうか。

 

昨今の食品加工メーカーはロボット化が進み、生産性が向上しています。小ロットにも対応できるところが増えてきました。そういったメーカーの手を借りつつ、自店のオリジナリティーを打ち出していく形式の店が増えていくことでしょう。ハンバーグならレシピをメーカーに伝えて、1個ずつ焼いて真空パックした状態で納品してもらい、シェフのオリジナリティーは、店内で作るソースで表現するといった具合です。

 

仕事の一部を外部に任せることに抵抗を感じる方は多いはずです。しかし、長期的な人手不足を前提とするならば、時代の変化に対応して何かを変えていかなければなりません。品質が保てると判断すれば、アウトソースして省力化できる作業は多いはずです。何を残し、何を変えていくのか。その見極めは、自分の店のアイデンティティを見直すことにもつながります。新しい時代の始まりに取り組む作業としてもふさわしいのではないでしょうか。

 

 

 

 

講師紹介

 

坂場一昭(さかば・かずあき)

NRTシステム代表取締役 畑治(はた・おさむ)

1959年岡山県倉敷市生まれ。大阪大学工学部を卒業後、フードサービス企業やフードサービスのコンサルティング企業などを経て、1988年に厨房設計コンサルティング業務を手掛けるNRTシステムに入社。2010年に代表取締役に就任。モットーは「日本の厨房を良くしよう!」

 

 

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